5つの全地球測位衛星システムについて

全地球測位衛星システム(Global Navigation Satellite Systems:以下、GNSS)を理解するには、まずGNSSとGPSの関係を理解しましょう。GPSはGNSSの一部で、GPSはGNSSにとって非常に重要ですが、GNSS全体を構成する他の4つの衛星群も存在しています。複数の衛星群を持つことの主な目的は、ある衛星群の測位が難しくなったり特定の条件下で機能しなくなった場合に、そのシステムを補うことにあります。

以下の5つのGNSSは、それぞれ別々の国々と欧州連合によって開発されました。

● GPS(アメリカ)

● みちびき:QZSS(日本)

● 北斗:BeiDou(中国)

● ガリレオ (欧州連合)

● GLONASS(ロシア)

GPS

GPSは1978年に運用が始まり、1994年に世界的に利用可能になった最初のGNSSです。GPSはアメリカ国防総省がその技術の潜在的な価値に気付いた後、独立した軍事ナビゲーションシステムとして導入されました。このシステムは、戦争時に敵からのノイズや干渉に対して高い精度とセキュリティを提供するよう意図的に作られました。GPSはレーガン大統領による行政命令によって、1983年に初めて一般に公開されました。


GPSはLバンドと呼ばれる1〜2 GHzの無線周波数スペクトルの一部で動作し、以下の理由があります:

● より低い周波数では電離層での遅延が大きくなる

● アンテナ設計を簡素化することができる

● 天候がGPS信号の伝播に与える影響を最小限に抑えることができる


GPSは世界最初のGNSSですが、今でも世界で最も正確なナビゲーションシステムです。最新のGPS衛星はルビジウムウォッチを使用し、地上のセシウムウォッチと同期してさらに高い精度を実現しています。



みちびき(QZSS)

みちびき(Quasi-Zenith Satellite System)は、日本の地域衛星システムであり「日本版GPS」と呼ぶこともあります。2023年12月時点で、4機体制のみちびきは準天頂軌道を周回する3機の衛星群と、赤道上空の静止軌道に配置する1機の静止衛星から構成されています。2026年を目処に7機体制を目指しており、準天頂軌道・静止軌道・準静止軌道にそれぞれ1機の衛星が追加配置されます。追加される3機により、みちびきが送信する信号の受信可能範囲が広がります。みちびきは、高精度の位置情報の安定性を確保するためにGPSとの互換性があり、重要な特徴となっています。

北斗(BeiDou)

北斗(BeiDou)は、中国のGNSSで北斗1号、2号、3号のそれぞれ独立した各衛星群から構成されています。

北斗1号(BeiDou-1)

北斗1号は全地球ではなく限定された地域のみに於いて機能し、2000年から2007年にかけて4基の衛星が打ち上げられ、その後、全て撤退しました。

北斗2号(BeiDou-2)

北斗2号(コンパス)は2011年に10個の衛星の一部を使用して運用を開始したシステムです。2012年以後は、アジア太平洋地域のユーザーにサービスを提供しています。

北斗3号(BeiDou-3)

北斗3号は35基の衛星で構成され、2020年7月から運用が開始され全地球をカバーしています。


ガリレオ

ガリレオは、既存および計画中のすべてのGNSSと互換性を持つ欧州連合のGNSSで、2016年にサービスの提供が始まりました。その他のGNSSと相互運用できるように設計されており、世界中のマルチコンステレーションのユーザーに、よりシームレスで正確な体験を提供しています。

ガリレオは、ユーザーにより高い精度と正確さを提供するだけでなく、ナビゲーションの改善、緊急時の対応、道路や鉄道の効率化、新しい製品・サービス・雇用の創出を通じて、欧州市民の生活を向上させています。ガリレオプログラムは、欧州連合が資金を提供し、所有しており、民間の管理のもと、そのデータを無料で幅広い用途に提供しています。


GLONASS

GLONASSは1976年にソビエト連邦の下で開発が始まった、ロシア版のGPSです。開設してから、以下の5つのバージョンがあります:

1. GLONASS(1982)

2. GLONASS-M(2003)

3. GLONASS-K(2011)

4. GLONASS-K2(2015)

5. GLONASS-KM(2025:現在、研究開発中)

Assisted GLONASS (A-GLONASS)は、スマートフォン向けに特別に設計された追加機能を備えた、基本的な機能を持っています。例えば、ナビゲーションでのターンバイターンの指示やリアルタイムの交通情報などは、A-GLONASSで利用可能な機能例ですが、位置情報を正確に追跡するために基地局アンテナに依存しています。


GPSとGLONASSの違いとは?

アメリカのGPSネットワークは31台の衛星を使用していますが、ロシアのGLONASSの衛星は24台です。アメリカのGPSはGLONASSよりもわずかに正確で、より低い周波数で動作します。これは、GPSが強力なネットワークを持っているのに対して、GLONASSには大きな利点がありません。一般的には、GPSはネットワークが大きいのでその信号が失われた場合に、GLONASSをGPSのバックアップとして使用しています。