勾配と垂直速度


レースやトレーニングにおいて、目標を達成するために上りの状況やペース、標高差などのデータを参考にしながらもどういったデータをGPSウォッチから把握すべきでしょうか。

COROSのウォッチが提供する数多いデータの中でも、ランナーが日々のトレーニングやレースで見落としがちなのが「勾配」と「垂直速度」です。


勾配というと、15°、30°などといった「角度」を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、勾配についてしっかりと理解している人はそこまで多くありません。COROSのウォッチは国際的基準となっている「%」で勾配を示します。ランナーだけでなくサイクリストにもイメージしにく単位かもしれませんので、一般的な勾配の概念について以下で説明します。



勾配の定義

勾配とは表面単位の傾斜の度合いで、通常は垂直距離と水平距離の百分率で表されます。


勾配(%)=(2点間の垂直距離÷2点間の水平距離)×100

例えば10%の勾配とは、水平方向に100m進むごとに、垂直方向に10m上昇することを意味します。 当然、勾配には負の値もあり、正の値は上り坂、負の値は下り坂を意味します。


"勾配 "と "角度 "の関係

まず、ハッキリさせておきたいのは、「勾配 ≠ 角度」だということです。

では、勾配と角度はどのような関係なのでしょうか。ここでは、「タンジェント=勾配」という公式を紹介します。 三角関数について覚えていない人は、下の表を参考にしてください。

急斜面に差し掛かると通常はペースが遅くなります。この局面では単位時間あたりの水平距離の変化が小さいため、GPSが「動いていない」と判断してしまうこともあるほどです。 その結果、ランナーがレースの所要時間を正確に把握できない可能性もあります。

そこで登場するのが垂直速度です。これはその名の通り、一定時間の垂直方向におけるユーザーの速度をm/h(メートル毎時)で表したものです。 垂直速度の計算は、気圧計からのものであり、より正確かつ敏感に現在の高度変化をとらえたデータが取得できます。トレーニングでもレースでも上り坂の垂直速度がわかれば、その上り坂をどれくらいで終えられるかの予測を容易にできるようになります。


(詳細ページで各ラップの垂直速度が表示され、効果的な分析ができます)


日々の坂道でのトレーニングでは、勾配と垂直速度を組み合わせることで、より総合的な登坂力を認識することができます。 トレイルランニングにおいて上り坂は非常に重要な局面であり、下り坂で大幅に加速できても、上り坂での減速を相殺できないことが研究で明らかになっています(統計では平地に比べ上り坂では最大23%の減速、下り坂では13.8%しか加速できない)。したがって、より正確で効果的な情報を理解しながらペース配分やレース戦略の修正を行うことが、トレーニングやレースで自身の能力を最大限発揮することに繋がります。


また、トレイルランニングに限らず、登山やアルペンスキーなど多くの山岳スポーツにおいて垂直速度は、プロアスリートが日常的に参考にしている重要なデータです。今後、垂直速度のデータを追加して、トレーニングやレースで有効活用してみてください。