VO2Max(最大酸素摂取量)とは?


VO2Max(最大酸素摂取量:Maximal Oxygen Uptake)とは、筋群を動かす長時間の激しい運動中に、心肺機能と筋肉の酸素利用能力が限界に達したときに、単位時間(通常は1分間)あたりに取り込まれる酸素量のことを示します。




最大酸素摂取量はVO2max(O2=酸素、max=最大値)と表され、現在国際的な学術誌ではVdotO2maxの代わりにVO2maxが用いられていて、双方の関係は速度と距離の関係になぞらえます。Vdotは単位時間あたりの酸素量を示し、どちらも最大酸素摂取量の絶対値と相対値を示しています。絶対値は単位時間(1分)あたりに体内に吸入できる最大酸素量:L/minです。また、身長や体重の個人差が大きいため、体重1kgあたりの最大酸素摂取量:ml/(kg-min)が導入されています。


プロの持久系アスリートのVO2maxは概ね60~70と高く、クロスカントリースキーやサイクリング、長距離走などの持久系アスリートのVO2maxの平均はその他のスポーツよりも高いといえます。2012年にノルウェーのサイクリストであるオスカー・スヴェンセン氏が97.5mL/(kg-min)のVO2maxの世界記録を更新しました。

VO2maxは遺伝的要因に強く影響を受け、年齢や性別、トレーニング内容などの要因によって変化します。一般人のVO2maxは体系的なトレーニングにより向上させることができますが、それでも上限があって遺伝的要因によって制限されます。VO2maxはパフォーマンスレベルと相関がありますが、VO2maxが高ければ高いほど運動能力が高いとも限りません。また、個人どうしのVO2maxの値の比較も意味をなしません。

VO2Maxは直接計測法もしくは、間接計測法によって測定されます。直接計測法は被験者がガスマスクを装着して運動を行い、運動強度を上げ続けてコンピュータで吸気と呼気ガスのサンプルを収集・分析し、酸素摂取量がそれ以上増加できなくなると、その時点での酸素摂取量をVO2Maxとします。


直接計測法の測定条件:

1、ランニング、サイクリング、ボート漕ぎなど大きな筋肉を使い、全身の筋肉量の50%以上を使う運動。 一般的に使用される機器はトレッドミル、パワーバイク、パワーローイングマシンなどで、測定に使用する機器は速度や抵抗をコントロールできます。

2、特定の専門分野を除いて、被験者の体格、体力、スピード、運動技能に影響されないこと。

計測は被験者が呼吸器・循環器系を十分に働かせることができるような時間が適切であり、通常は6~12分間程度です。

3、被験者は事前に医療チェックを受け、健康状態が良好でかつ強度の高い運動に耐えられる状態である必要があります。また、計測時に終始心拍数の上昇をモニタリングできることが求められます。


VO2Maxの決定基準

1、酸素摂取量はプラトーに達し、以降増加しなくなります。

2、呼吸交換率(RER:代謝で発生する二酸化炭素量と消費酸素量の比)が1.1より大きいこと。

3、心拍数が被験者の年齢に対する最大心拍数の予測値の85%以上であること。

VO2maxを決定するためには、上記3つの条件のうち2つが必要になります。しかし、これらが発生せず、被験者が疲労困憊の状況では、計測した最大値をVO2Maxとします。


実験室でのVO2Max測定は複雑であり、研究者はデータモデリングによってVO2Max測定のためのより簡単な解決策を研究しています。 例えば、ACSM(米国スポーツ医学会)のLarry教授の2006年でのテストがあります。その実験の目的は年齢、性別、BMI、体脂肪率、ウエストのサイズ、非運動時の身体活動スコアなどの個人指標に関するデータを収集し、適切な回帰式の導出を検討することでした。

VO2Maxの予測は、実際のVO2Maxを収集し、変数と実測値の相関を計算することで、限られた条件下でより正確な数値予測を可能にします。

実験はNASA/ジョンソン宇宙センターで行われ、被験者は合計2,801人。各被験者は事前に健康診断を受けて健康状態に問題が無く、個人的なPASSスコア(0〜10、運動レベルの自己評価)を提出しました。また、実験前に各被験者の身長、体重、ウエストのサイズ、体脂肪、BMIのデータも収集されました。

左から:ブルーストレッドミル試験法の段階, 速度(mph), 傾斜(%), 継続時間(分)

ブルース・トレッドミル試験とは、ガスマスク、酸素・炭酸ガスモニター装置、リアルタイム心電図を使用し、被験者が疲弊する前の60秒間の最高酸素摂取量をVO2Maxとするものです。 各被験者のデータはすべて記録され、すべての被験者のテスト終了後に重回帰式が計算され、適切な式が得られます。


以上の実験から、VO2maxのロジックと意義が理解できます。

1、特定の1つ以上の独立変数(例:速度、時間、体重、ウエストのサイズなど)を制御して、VO2Maxに対応する予測回帰式を導き出します。

2、被験者のスクリーニング条件が異なると、最終的な予測回帰式の一般性や精度に大きく影響します(年齢層、職業、健康状態など)。

3、コンピュータを通じ、実験における独立変数とVO2max値との関係に対応する回帰式を生成してr値(決定係数)とSEE(残差の二乗和)の両方を求めることができます。

4、回帰式予測はより便利なVO2Maxのテスト方法を提供し、直接計測法よりもコストや被験者自身の体力や運動能力の要求が低く、普及率が高くなります。

スマートウェアラブル端末が提供するVO2Maxの情報も類似の回帰式で算出されます。ウォッチに内蔵されたアルゴリズムを通じて条件を満たす一定期間の心拍数、心拍変動、ペース、ペース変動を取得し、身長、体重、年齢などのユーザーの個人情報と組み合わせて、回帰式よりVO2Maxの推定値を算出します。


データやアルゴリズムによるVO2Maxの評価は、以下の理由より実験室での測定と多少異なることが考えられます。

● 個人差があり、回帰式自体にどうしても偏った数値が出てしまいます。

● 推定式には多くの制限条件があり、個々の条件がモデルと一致しない場合、予測値に大きな偏りが生じる可能性があります。

● スポーツウォッチの装着中に必ずしも疲労困憊になるとは限らず、VO2Maxが少なく表示される可能性があります。